MIKONE。
それは、原木椎茸の里・大槌町金沢集落で、古くから私の家に伝わる屋号「神根(みこね)」に由来しています。
長きにわたり信仰の対象となっている神社、その下にある「神の御膝元」「神様の下にある家」だから神根。
集落には歴史ある金沢神楽が今も継承され、人々は今も神様への畏怖と感謝の気持ちを持ちながら暮らしています。自然に生かされ暮らす私たちがつくる原木椎茸と野菜を象徴する名前としてMIKONEと名づけました。
金沢村村社 金沢稲荷神社
金沢集落は古くはリンゴの栽培や林業が盛んな土地柄でしたが、戦後に原木椎茸の栽培が始まり、一大産地になりました。全国でも有数の産地である岩手県の中でも金沢集落は質、量ともに定評がある産地です。
スギやマツといった針葉樹だけでなく広葉樹が豊富な土地柄なため、原木椎茸の生産に必要なほだ木に適したナラやクヌギが手に入りやすいという事情もありました。
さらに標高が高く夏は涼しくて冬は暖かい気候と豊富な水も大産地となった理由です。温暖だと成長は早くなりますが、そのぶん一気に椎茸のかさが開いてしまいます。冷涼な金沢は1年を通じて、ゆっくり育った肉厚な椎茸をつくることができるのです。
近くを流れる大槌川は山の栄養分を大槌湾まで運び海産物を育てる
標高の高さと豊富な水は、原木椎茸だけでなく、ほかの野菜の生産にも適した条件です。わたしたちは、金沢集落に暮らすスタッフとともに、原木椎茸とほうれんそうなどの野菜、さらにトルコキキョウを中心とした花卉の生産に取り組んでいます。椎茸以外の野菜の生産量はまだ少量ですが、毎年少しずつ種類を増やしているところです。
山あいの金沢のめぐまれた地域資源や気候をフルに活用し、この地域ならではの農業のかたちをつくっていきたい、とスタッフとともに日々、研究を重ねています。
里山の肥沃な土に抱かれ、穏やかに力強く野菜は育つ
私が農業の世界に入ったのは2015年。まずは父の見様見真似で手伝ってみましたが、「その世界の一番上を見てみたい」と原木椎茸界のカリスマ・岐阜の椎茸ブラザーズさんのもとへ修行に。
ファンを増やしながら販売する姿勢に強く共感し、大槌に戻ってからはクラウドファンドを活用したりインスタグラムで椎茸の成長の様子や集落の風景を発信したりと試行錯誤しながら、日々生産に取り組んでいます。
長年ひとりで椎茸栽培を担ってきた父が病気で亡くなり、今はわたしが神根の家、そして家に伝わる農林業を守る立場になりました。少しずつ椎茸以外にも取り組み始め、今はほうれん草を中心に野菜の生産に挑戦しています。
農業の素人だからこそ既成概念にとらわれずにできることがあります。先祖代々の金沢の地から、スタッフといっしょにMIKONEで金沢に新しい歴史をつくっていきたいと思っています。